「なぜiPhone 9は発売されなかった?」と思ったことはありませんか?
iPhoneのラインナップを見ると、iPhone 8の次がいきなりiPhone Xになっており、「9」という番号が完全に飛ばされています。スマートフォンを使い始めたばかりの方や、iPhoneの歴史をあまり知らない方は、「もしかしてiPhone 9は発売されたのに日本では売っていないの?」と疑問に思うかもしれません。
結論から言うと、
Appleが意図的に「9」という番号をスキップしたのです。
この記事では、なぜAppleがiPhone 9を作らなかったのか、その理由を歴史的背景・マーケティング戦略・文化的要因など多角的な視点から詳しく解説します。iPhone Xが登場した背景にある戦略を理解すると、Appleというブランドの深さがよりよくわかるはずです。
ぜひ最後まで読んでみてください。
iPhone 9は本当に存在しないのか?まず事実を確認しよう
まず誤解を解くために、事実を整理しておきましょう。
iPhone 9は2024年現在に至るまで、一度も発売されたことがありません。公式ラインナップに「iPhone 9」という製品は存在せず、予告も発表もされていません。
iPhoneの世代を時系列で並べると、次のようになります。
- 2007年:iPhone(初代)
- 2008年:iPhone 3G
- 2009年:iPhone 3GS
- 2010年:iPhone 4
- 2011年:iPhone 4S
- 2012年:iPhone 5
- 2013年:iPhone 5s / iPhone 5c
- 2014年:iPhone 6 / iPhone 6 Plus
- 2015年:iPhone 6s / iPhone 6s Plus
- 2016年:iPhone 7 / iPhone 7 Plus
- 2017年:iPhone 8 / iPhone 8 Plus / iPhone X(テン)
- 2018年以降:iPhone XS、XR、11、12、13、14、15、16……
このように、「7」の次が「8」になるのは自然な流れですが、「8」の次はなぜか「9」ではなく「X(テン)」になっています。これはAppleが意図的に行った命名であり、単なるミスや欠番ではありません。
「なぜ9を飛ばしたのか?」という疑問には、実はいくつかの理由が重なり合っています。それを順番に解説していきましょう。
最大の理由:2017年はiPhone誕生10周年という特別な年だった
iPhone 9が存在しない最も大きな理由は、
からです。
初代iPhoneが発売されたのは2007年6月29日のことです。スティーブ・ジョブズがMacWorldで「革命的な製品を3つ発表する」と語り、電話・音楽プレーヤー・インターネット端末を一体化した「iPhone」を世界に披露しました。あの瞬間から10年が経過したのが、2017年です。
Appleにとって、この10周年は単なる記念日ではありませんでした。「過去10年の集大成として、未来に向けた全く新しいiPhoneを作る」という強い意志を持って製品開発が進められたのです。
そこで登場したのが「iPhone X」です。「X」はローマ数字で「10」を意味します。つまり「iPhone 10周年記念モデル」という意味合いを込めた命名でした。もし「iPhone 9」として発売していたら、この特別な意義を表現することができなかったのです。
これを聞いて「なるほど、10周年だから『X』にしたんだ」と思ったかもしれませんね。しかし、実はそれだけではありません。iPhone Xは単に名前を変えただけでなく、iPhoneの根本的な設計を刷新した革命的な製品でもありました。次のセクションで詳しく見ていきましょう。
ちなみに、iPhone XはiPhone 8と同じ2017年9月に発表されましたが、発売日は少し遅く、11月3日からとなりました。iPhone 8が9月22日に発売されたのに対し、約1ヶ月半の差がありました。この遅れは、全く新しい設計のためにより多くの開発時間が必要だったためと言われています。
iPhone Xがもたらした「デザインの革命」とは何か
iPhone 9が存在しない理由をより深く理解するために、iPhone Xがいかに革新的な製品だったかを知っておくことが大切です。
iPhone Xは、それまでのiPhoneとは全く異なるデザインコンセプトを持つ製品でした。その変化のポイントを整理すると次のようになります。
ホームボタンの廃止
2007年の初代iPhoneから10年間、iPhoneには必ずホームボタンが付いていました。しかしiPhone Xでは、ホームボタンが完全に廃止されました。当時のiPhoenや他社スマートフォンにとって、これは非常に大きな変更で、「iPhoneといえばホームボタン」というイメージを根本から覆すものでした。
ホームボタンがなくなった代わりに、スワイプ操作でホーム画面に戻る「ジェスチャー操作」が採用されました。最初は戸惑うユーザーも多かったですが、この操作体系は現在のiPhoneにも引き継がれています。
Face IDの導入
ホームボタンの廃止に伴い、それまでの指紋認証(Touch ID)に代わって顔認証(Face ID)が採用されました。赤外線カメラと点光源プロジェクターを使った高精度な顔認識技術で、暗い場所でも眼鏡をかけていても正確に認証できると話題になりました。
Face IDの精度は非常に高く、他人が誤って解除できる確率は100万分の1以下とされています。Touch IDが5万分の1以下だったことと比べると、セキュリティが大幅に向上しました。
有機EL(OLED)ディスプレイの採用
iPhone Xは、iPhoneとして初めて有機EL(OLED)ディスプレイを搭載しました。それまでのiPhoneはすべて液晶(LCD)ディスプレイを使っていたため、これも大きな転換点でした。
OLEDは自発光型のディスプレイで、深い黒色の表現や高いコントラスト比が特徴です。「Super Retina HDディスプレイ」と名付けられたこの画面は、5.8インチという大画面でありながら、端末本体はiPhone 8より少し大きい程度に抑えられていました。これは、画面の四隅まで有効活用するベゼルレスデザインによるものです。
ベゼルレスデザイン
iPhone Xはディスプレイの周囲にある「ベゼル(枠)」を最小限まで削ったベゼルレスデザインを採用しました。正面から見ると、ほぼ全面がディスプレイという印象を受けます。ただし、前面カメラやFace IDのセンサーを収めるために、上部に「ノッチ」と呼ばれる切り欠きが設けられていました。
このノッチはその後のiPhoneにも継承されましたが、iPhone 14 ProからはDynamic Islandという新しい形に進化しています。
このように、iPhone Xは名前だけでなく、中身も完全に新しいiPhoneでした。「9」というナンバーでは到底表現できなかったほどの革新性があったため、Appleは「X(テン)」という特別な名称を選んだのです。
「9」という数字に関する文化的な背景
iPhone 9が存在しない理由の一つとして、文化的・言語的な要因も指摘されることがあります。これは公式見解ではありませんが、Apple社がグローバル市場を意識している以上、まったく無関係とは言い切れない視点です。
日本語における「9」の読み方
日本語で「9」は「く」とも読みます。「く」は「苦」に通じるため、日本では昔から9を不吉な数字として避ける習慣があります。病院の病室番号や、マンションの部屋番号などで「4」(し=死)と並んで「9」を避けるケースがあるのは、こうした文化的背景からきています。
日本はAppleにとって非常に重要な市場です。iPhoneのシェアが世界的に見ても特に高い国の一つであり、日本ユーザーへの配慮という観点でも「iPhone 9」という名称を避ける動機はあったかもしれません。
中国語における「9」の意味
一方、中国語では「9」(jiǔ)は「久しい・長続きする」という意味の語に発音が近いため、縁起が良い数字とされることもあります。ただし、「9」という発音が「苦しみ」「痛み」を意味する語に近いという解釈もあり、地域やコンテキストによって受け取られ方が異なります。
中国もAppleにとって巨大な市場であり、マーケティング戦略上、数字の文化的な意味合いを考慮することは珍しくありません。
英語圏にある「9」に関するジョーク
英語圏には「Why was 6 afraid of 7?(なぜ6は7を恐れていたのか)」というジョークがあります。答えは「Because 7 eight 9(7が9を食べたから)」。「eight(8)」と「ate(食べた)」の発音が同じであることを利用したシャレです。つまり「7が9を食べてしまったから9がいない」という意味になります。
もちろんこれはジョークの話ですが、iPhone 9が存在しないことへの風刺として引用されることもあり、英語圏のテックコミュニティでは「7 ate 9」という表現がiPhone 9不在の理由として冗談交じりに語られることがあります。
こうした文化的・言語的な要因がAppleの決定に直接影響したかどうかは不明ですが、グローバル戦略を展開する企業がこういった側面を考慮することは十分あり得ます。
Apple製品の命名規則の歴史を振り返ってみよう
iPhone 9が存在しない背景をより理解するために、Appleの製品命名の歴史を振り返ってみましょう。実はiPhoneの命名には、一貫したルールがあるようでいて、しばしばルールを破ってきた歴史があります。
初期の命名:番号ではなくサフィックスを使う時代
初代iPhoneは単に「iPhone」と呼ばれていました。2008年に発売された「iPhone 3G」は、3G通信に対応したことを示す名称で、これは製品の世代を表す番号ではなく、対応ネットワーク規格を示したものでした。2009年の「iPhone 3GS」はiPhone 3Gをスピードアップしたモデルという意味の「S」がついています。
このように、Apple初期のiPhone命名には番号以外の要素が使われていました。
数字による世代表示の始まり
「iPhone 4」(2010年)から本格的に数字による世代表示が始まりました。以降、iPhone 4S、iPhone 5、5s、5c、6、6 Plus、6s、6s Plus、7、7 Plus、8、8 Plusと続きます。
この命名パターンは、「偶数年は大幅リニューアル、奇数年はSモデル(スペックアップ)」という法則性を持っていました。そのため、ユーザーの間では「2017年はiPhone 8Sが出るのでは?」という予測もありました。しかし実際はiPhone 8とiPhone Xという全く新しい二本立て展開になり、ユーザーの予想を大きく裏切りました。
iPhone X以降の命名の複雑化
iPhone Xの後、Appleの命名規則はさらに複雑になっていきます。2018年にはiPhone XS・XS Max・XR、2019年にはiPhone 11・11 Pro・11 Pro Max、2020年にはiPhone 12・12 mini・12 Pro・12 Pro Max、そして2021年以降はiPhone 13、14、15、16と続きます。
iPhone Xの後に「XS」「XR」「11」と続く命名は、一貫性があるようで実はかなり複雑です。なぜ「11」に戻ったのか、「X(テン)」はどこへ行ったのか?という疑問を持った方も多いでしょう。
これはAppleが特定のブランドイメージを守りながらも、その時々のマーケティング戦略や製品の位置づけに応じて柔軟に命名を変えているためです。特定の数字に縛られず、ブランドの価値を最優先するのがAppleスタイルと言えるかもしれません。
「2」も存在しない:iPhone 9だけが特別ではない
実は、iPhone 9だけが「欠番」なのではありません。「iPhone 2」も存在しません。2008年に発売された2代目iPhoneは「iPhone 2」ではなく「iPhone 3G」でした。
このように、Appleは製品の命名において「連番で番号を付ける」というルールに縛られてきませんでした。製品のコンセプトやブランドメッセージを優先して命名するのがAppleの哲学であり、iPhone 9が存在しないのもその延長線上にある話です。
iPhone 8とiPhone Xが同じ年に発売された背景と戦略
2017年、Appleは同じ年に「iPhone 8 / iPhone 8 Plus」と「iPhone X」という2種類の製品を発売しました。これはなぜでしょうか?その背景には明確な戦略がありました。
異なるターゲット層への対応
iPhone 8は、従来のiPhoneユーザーが買い替えやすい「進化版」として位置づけられていました。デザインはiPhone 6・7シリーズを踏襲しつつ、チップやカメラなどの性能を強化した製品です。価格帯も従来モデルに準じており、手の届きやすい設定でした。
一方のiPhone Xは、全く新しいデザインと機能を持つ「プレミアムモデル」として、より意欲的なユーザーに向けた製品でした。価格も999ドル(日本では11万円台〜)と、当時のiPhoneとしては異例の高価格帯でした。
「変化に慣れたくない人にはiPhone 8、最新技術を体験したい人にはiPhone X」という棲み分けを意識したラインナップだったと考えられます。この二本立て戦略は、現在のiPhoneスタンダード・Proという製品構成の礎になっています。
技術的な課題がiPhone Xの発売を遅らせた
iPhone Xの開発は難航したとも言われています。ホームボタンの廃止、Face IDの実装、ベゼルレスデザインの実現など、多くの新技術を同時に盛り込もうとしたため、製造上の課題も多く発生しました。
そのため、iPhone XはiPhone 8よりも約6週間遅れての発売となりました。iPhone 8が9月22日発売だったのに対し、iPhone Xは11月3日発売となっています。もしiPhone Xの開発が順調だったなら、iPhone 8との同時発売か、あるいはiPhone Xのみの発売だったかもしれません。
需要が供給を大幅に上回った人気ぶり
発売当初、iPhone Xは需要が供給を大幅に上回り、入手困難な状況が続きました。日本でも予約が殺到し、入手まで数週間かかるケースが相次ぎました。定価11万円を超えるにもかかわらずこれほどの人気を集めたのは、それだけiPhone Xが「これまでとは全く違う何か」として消費者に認識されたからです。
仮に「iPhone 9」として発売していれば、ここまでの話題性と熱狂を生み出すことは難しかったでしょう。「X(テン)」という名称と10周年というストーリーが合わさったことで、製品の価値がさらに高まりました。
もしiPhone 9が存在していたら、どんな製品だったのか
もしAppleがiPhone 9を発売していたとしたら、どんな製品になっていたでしょうか?少し想像してみましょう。
iPhone 8Sとして登場していた可能性が高い
過去のパターンを踏まえると、2017年のiPhoneは「iPhone 8S」として登場してもおかしくありませんでした。偶数年にデザインリニューアル、奇数年にSモデルというサイクルが続いていたためです。しかし2017年はiPhone誕生10周年という特別な事情があり、このサイクルは意図的に破られました。
つまり、「iPhone 9」として登場していた可能性のある製品は、「iPhone 8S」として同じような内容で出ていた可能性が高く、革新的な製品というよりもマイナーアップデートにとどまっていたと考えられます。
iPhone SEとの関係性:「iPhone 9相当」の製品は存在した?
2020年にAppleは「iPhone SE(第2世代)」を発売しました。このSEはiPhone 8に近いデザインにA13チップを搭載した製品で、価格は廉価に設定されています。
一部では「iPhone SEの第2世代こそがiPhone 9の後継に相当するのでは?」という見方もあります。iPhone 8のデザインを踏襲しつつ最新チップを搭載するという方向性は、「iPhone 9」が存在したとすれば持ちえたコンセプトに近いからです。
実際、SEは2022年に第3世代も発売されており、エントリーユーザーや手頃な価格のiPhoneを求めるユーザーから引き続き支持されています。SEシリーズがiPhone 9の「代わり」として機能したと捉える見方は、あながち的外れではないかもしれません。
「9」というナンバーがなかったことで生まれた価値
「9」という番号のままではなく「X(テン)」という特別な名称を与えることで、Appleはユーザーに「これは全く新しいiPhoneだ」というメッセージを強く伝えることができました。マーケティング的に見ても、「iPhone 9」より「iPhone X(テン)」の方が圧倒的にインパクトが大きかったと言えるでしょう。
「番号をスキップした」という事実そのものが話題になり、「なぜiPhone 9はないの?」という疑問がSNSやニュースで拡散されました。意図せずして生まれたバイラルマーケティング効果とも言えます。Appleが意図的にこの話題性を計算に入れていたとすれば、さすがのマーケティング戦略と言わざるを得ません。
まとめ:iPhone 9がない理由はAppleの「未来へのメッセージ」だった
この記事を通じて、「なぜiPhone 9は存在しないのか」という疑問の答えが明確になったと思います。最後に要点を整理しておきましょう。
iPhone 9が存在しない主な理由は次のとおりです。
- 2017年がiPhone誕生10周年という特別な節目の年だったため、ローマ数字で10を意味する「X(テン)」という命名が選ばれた
- iPhone Xはホームボタン廃止・Face ID導入・OLEDディスプレイ採用・ベゼルレスデザインなど、従来のiPhoneとは全く異なる革新的な製品であり、「9」という連番では価値を表現しきれなかった
- 日本語の「9(く)→苦」をはじめとする文化的・言語的な要因も関係していた可能性がある
- Appleはもともと命名に一貫した番号ルールを設けておらず、ブランドメッセージを優先した命名を行ってきた歴史がある(iPhone 2も存在しない)
- 「なぜ9がないの?」という話題そのものが口コミ・バイラル効果を生み、製品の注目度を高めるマーケティング上の副産物にもなった
iPhone 9が「なかった」のは、単なる欠番ではありません。Appleが「ここで一線を画す」という強い意志を持って、iPhoneの10年の歴史を振り返り、次の10年への未来図を描いたからこそ生まれた空白でした。
このエピソードは、Appleというブランドが技術革新だけでなく、ネーミングやマーケティングでも非常に緻密な戦略を持っていることを示しています。あなたが今使っているiPhoneも、こうした歴史と戦略の上に成り立っているのです。iPhoneをただのスマートフォンとして使うだけでなく、その背景にある物語を知ることで、より深い愛着が生まれるかもしれません。
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