「DRAMとNANDって何が違うの?」「どちらも半導体メモリと聞くけれど、役割の違いがよく分からない…」と疑問に思っていませんか。DRAMとNANDは、パソコンやスマートフォンに必ず搭載されている2大メモリですが、仕組みも役割もまったく異なります。ニュースで「DRAM価格が高騰」「NAND型フラッシュメモリの増産」といった話題を目にする機会も増え、違いを正しく理解しておきたい方も多いはずです。この記事では、DRAMとNANDの違いを「データ保持」「速度と役割」「容量・コスト・寿命」という3つの視点から、初めての方にも分かりやすく解説します。読み終わるころには、パソコンやスマホのスペック表を見たときに、どこがDRAMでどこがNANDなのかが自然と分かるようになっているはずです。
DRAMとNANDの違いを一覧でチェック
まずは、DRAMとNANDの違いをまとめて確認しておきましょう。細かい仕組みは後ほど解説するので、ここでは全体像をつかんでください。
- データ保持:DRAM=電源を切ると消える(揮発性)|NAND=電源を切っても残る(不揮発性)
- 主な役割:DRAM=作業用メモリ(メインメモリ)|NAND=保存用ストレージ
- 速度:DRAM=非常に高速|NAND=DRAMより遅いがHDDよりは高速
- 容量あたりのコスト:DRAM=高い|NAND=安い
- 搭載例:DRAM=PCのメモリ、スマホのRAM|NAND=SSD、スマホのストレージ、USBメモリ、SDカード
- 書き換え回数:DRAM=実質無制限|NAND=上限あり(劣化する)
ひとことでまとめると、DRAMは「今の作業を高速にこなすためのメモリ」、NANDは「データを長期間しまっておくためのメモリ」です。この役割分担を頭に入れたうえで、それぞれの仕組みを見ていきましょう。
DRAMとは?「作業机」の役割を持つ高速メモリ
CPUと連携して「今の処理」を支えるメインメモリ
DRAM(ディーラム、Dynamic Random Access Memory)は、パソコンやスマホが「いま実行している処理」のデータを一時的に置いておくためのメモリです。一般に「メモリ」「RAM」と呼ばれているのがDRAMで、PCのスペック表にある「メモリ16GB」、スマホの「RAM8GB」という表記はDRAMの容量を指しています。
よく使われるたとえが「作業机」です。机が広いほど、たくさんの書類(アプリやデータ)を同時に広げて作業できます。DRAMの容量が大きいほど、複数のアプリを同時に開いてもサクサク動くのはこのためです。逆に容量が足りないと、机に載りきらない書類をいちいち棚に戻す作業が発生し、動作が重くなります。
コンデンサに電気を貯めて記憶する「揮発性」メモリ
DRAMは、コンデンサ(電気を一時的に蓄える部品)に電荷があるかないかで「1」と「0」を記憶します。この電荷は時間とともに自然に抜けてしまうため、定期的に電気を補充する「リフレッシュ」という動作を常に繰り返しています。「Dynamic(動的)」という名前は、この絶え間ない補充動作に由来します。
電気で記憶を保っている以上、電源を切れば当然データは消えます。これが「揮発性メモリ」と呼ばれる理由です。パソコンの電源を落とすと作業中のデータが消えてしまうのは、DRAM上のデータが失われるからです。構造がシンプルなぶん読み書きが非常に高速で、CPUの相棒として大量のデータをやり取りするのに適しています。
NANDとは?「保管棚」の役割を持つ保存用メモリ
電源を切ってもデータが消えない「不揮発性」メモリ
NAND(ナンド)型フラッシュメモリは、電源を切ってもデータが消えない「不揮発性メモリ」です。写真、動画、アプリ、OSといった「ずっと残しておきたいデータ」の保管場所として使われます。SSD、スマホの内蔵ストレージ、USBメモリ、SDカードの中身は、いずれもこのNANDです。スマホのスペック表で「ストレージ256GB」とあれば、それはNANDの容量を指しています。
先ほどの作業机のたとえでいえば、NANDは「保管棚(本棚)」です。作業が終わった書類は棚にしまっておき、必要になったらまた机(DRAM)に持ってきて広げる、という関係になっています。
絶縁膜に電子を閉じ込めて記憶し、大容量化しやすい構造
NANDは、絶縁膜で囲われた場所に電子を閉じ込めることでデータを記憶します。閉じ込められた電子は電源を切っても逃げないため、データが消えません。さらにNANDはメモリセルを高密度に詰め込める構造をしており、近年はセルを縦方向に積み上げる「3D NAND」技術によって、200層を超える多層化が進んでいます。1チップに大量のデータを記録できるため、容量あたりのコストをどんどん下げられるのがNANDの強みです。
ただし、書き込みのたびに絶縁膜が少しずつ傷むため、書き換え回数に上限があるという弱点も持っています。この点は後ほど詳しく解説します。
違い1:データ保持の仕組み(揮発性と不揮発性)
DRAMとNANDの最も本質的な違いは、「電源を切ったときにデータが残るかどうか」です。DRAMは電気を補充し続けないと記憶を保てない揮発性メモリ、NANDは電源なしでもデータを保持できる不揮発性メモリです。
「それならすべてNANDにすればいいのでは?」と思うかもしれませんが、そう単純ではありません。NANDはデータの読み書きの速度がDRAMに遠く及ばず、書き換え回数にも限りがあります。CPUが1秒間に何十億回も行うデータのやり取りをNANDに任せると、速度がまったく追いつかないうえ、あっという間に寿命を迎えてしまいます。だからこそ、高速だが消えるDRAMと、遅いが消えないNANDを組み合わせ、お互いの弱点を補い合う設計になっているのです。両者は競合する関係ではなく、役割の異なる名コンビだと考えると分かりやすいでしょう。
違い2:速度と役割(作業用と保存用)
速度はDRAMが圧倒的に上
読み書きの速度は、DRAMがNANDを大きく上回ります。DRAMはナノ秒(10億分の1秒)単位でデータにアクセスできるのに対し、NANDはそれよりはるかに遅く、特に書き込みに時間がかかります。とはいえNANDも、従来のHDD(ハードディスク)と比べればずっと高速です。パソコンのストレージをHDDからSSD(NAND)に替えると起動が劇的に速くなるのは、このためです。
役割分担:アプリを「動かす」のがDRAM、「しまう」のがNAND
実際の動作で見ると、役割の違いがよく分かります。スマホでアプリを起動すると、NAND(ストレージ)に保存されていたアプリのデータがDRAM(RAM)に読み込まれ、CPUがDRAM上のデータを使って処理を進めます。撮影した写真を保存すれば、それはNANDに書き込まれ、電源を切っても残ります。つまり「動かすときはDRAM、しまうときはNAND」という分担です。RAMの容量が大きいスマホはアプリの同時起動に強く、ストレージの容量が大きいスマホは写真や動画をたくさん保存できる、と整理すると選びやすくなります。
違い3:容量・コスト・寿命
容量とコストはNANDが有利
同じ容量あたりの価格を比べると、NANDのほうが圧倒的に安く済みます。これはNANDのほうがセルを高密度に詰め込め、3D化で大容量化しやすいためです。実際、スマホのRAM(DRAM)が8GB〜16GB程度なのに対し、ストレージ(NAND)は128GB〜1TBと桁違いに大きいですよね。大量のデータを安く保存する用途にはNANDが向いているのです。
寿命(書き換え回数)はDRAMが有利
一方、書き換えへの強さはDRAMに分があります。DRAMは構造上、何度書き換えても素子がほとんど劣化せず、実質的に書き換え回数を気にする必要がありません。対してNANDは、書き込みのたびに素子が少しずつ劣化し、書き換え回数に上限があります。SSDの仕様にある「TBW(総書き込み容量)」は、この寿命の目安を示す数値です。ただし、最近のSSDは劣化を分散させる制御技術が進んでおり、一般的な使い方で数年〜10年程度は問題なく使えるケースがほとんどなので、過度に心配する必要はありません。
パソコン・スマホ選びにどう活かす?容量の目安
DRAMとNANDの違いが分かると、デバイス選びの精度がぐっと上がります。それぞれの容量の目安は次のとおりです。
- PCのメモリ(DRAM):ネット閲覧や事務作業中心なら8GB、複数アプリの同時利用や軽い画像編集なら16GB、動画編集やゲームなら32GB以上が快適
- PCのストレージ(NAND/SSD):OSとアプリ中心なら256GB、写真や動画も保存するなら512GB〜1TBが安心
- スマホのRAM(DRAM):一般的な利用なら6〜8GB、ゲームを快適に遊ぶなら12GB以上
- スマホのストレージ(NAND):写真・動画が多い人は256GB以上を選ぶと後悔しにくい
「動作が重い」と感じる原因がメモリ不足(DRAM)なのか、「保存できない」原因がストレージ不足(NAND)なのかを切り分けられるようになると、買い替えや増設の判断もしやすくなります。
NANDには種類がある!SLC・TLC・QLCの違いも知っておこう
1つのセルに何ビット記録するかで性能が変わる
NANDをもう一歩深く理解するなら、「セルあたりの記録ビット数」による種類の違いも押さえておきましょう。NANDは1つのメモリセルに何ビットのデータを記録するかによって、次のように分類されます。
- SLC:1セルに1ビット。最も高速・高耐久だが容量単価が高い。産業用など特殊用途向け
- MLC:1セルに2ビット。速度・耐久と容量のバランス型
- TLC:1セルに3ビット。現在の主流。一般向けSSDやスマホの多くが採用
- QLC:1セルに4ビット。大容量・低価格だが、書き換え耐久性は低め
1つのセルに詰め込むビット数が増えるほど、同じチップでより多くのデータを記録でき、価格は安くなります。その代わり、読み書きの速度と書き換え耐久性は下がっていきます。つまり「容量と価格」を取るか「速度と寿命」を取るかのトレードオフになっているのです。
SSD選びでは「TLCかQLCか」をチェック
この知識は、SSDを購入するときに役立ちます。同じ1TBのSSDでも、TLC採用モデルとQLC採用モデルでは価格と耐久性に差があります。日常使いならQLCでも十分なことが多いですが、書き込みの多い作業(動画編集など)やシステムドライブとして長く使いたい場合は、TLCモデルを選ぶと安心です。製品仕様の「NANDタイプ」や「TBW」の項目を確認する習慣をつけると、価格だけに惑わされないSSD選びができるようになります。
DRAMとNANDを作っているのはどんな会社?
DRAMとNANDは、ニュースで半導体業界の動向を理解するうえでも重要なキーワードです。世界のDRAM市場は、韓国のサムスン電子とSKハイニックス、米国のマイクロン・テクノロジーの3社がシェアの大半を占める寡占市場となっています。一方のNAND市場も、サムスン電子、SKハイニックス、マイクロンに加え、日本のキオクシア(旧東芝メモリ)や米ウエスタンデジタル系が競う構図です。日本企業ではキオクシアがNANDの主要プレーヤーであり、NANDはもともと東芝で発明された技術でもあるため、日本とゆかりの深い半導体だといえます。
また、技術面では両者とも進化を続けています。NANDはセルを縦に積む3D化で200層を超える積層が実現し、さらなる多層化が進んでいます。DRAMもAI需要を背景に、チップを積層したHBMのような高性能品の開発競争が激しくなっています。「DRAM」「NAND」という言葉の意味が分かると、こうした半導体ニュースもぐっと身近に感じられるはずです。
DRAMとNANDの違いに関するよくある質問
なぜパソコンやスマホには両方必要なの?
役割がまったく異なるためです。DRAMだけでは電源を切るたびにすべてのデータが消えてしまい、NANDだけでは速度が足りずCPUの性能を活かせません。高速なDRAMで作業し、不揮発のNANDに保存するという組み合わせが、現状もっとも合理的な構成なのです。
最近よく聞く「HBM」はDRAMの仲間?
はい、HBM(広帯域メモリ)はDRAMチップを縦に積み重ねた高性能版のDRAMです。AIの計算には膨大なデータを高速にやり取りできるメモリが不可欠で、AI向け半導体の需要拡大とともにHBMが注目されています。「AI需要でDRAMが品薄」といったニュースの背景には、このHBMの存在があります。
DRAMやNANDの価格はなぜ大きく変動するの?
メモリは世界中のメーカーが同じ規格品を大量生産する製品のため、需要と供給のバランスで価格が大きく上下します。スマホやサーバーの需要が増えれば値上がりし、供給過剰になれば値下がりする、市況性の強い半導体です。メモリ増設やSSD購入を考えている場合は、価格動向をチェックしてから買うと出費を抑えられることがあります。
メモリ(DRAM)を増設するとパソコンは速くなる?
メモリ不足が原因で遅くなっている場合は、はっきり効果があります。DRAMが足りないと、パソコンは作業データの一部をSSD(NAND)に退避させながら動くため、速度の遅いNANDへのアクセスが増えて全体の動作が重くなります。メモリを増設してこの退避が減れば、複数アプリの切り替えやブラウザのタブを多く開く作業が快適になります。逆に、メモリに余裕があるのに遅い場合は、ストレージの劣化やCPU性能など別の原因を疑いましょう。
まとめ:DRAMは「作業机」、NANDは「保管棚」
DRAMとNANDの違いを整理すると、DRAMは電源を切るとデータが消える代わりに超高速な「作業用メモリ」、NANDは速度では劣るものの電源を切ってもデータが残る「保存用メモリ」です。速度と書き換え耐性ではDRAM、容量あたりのコストではNANDが優れており、両者が役割分担することでパソコンやスマホは快適に動いています。スペック表の「メモリ/RAM」はDRAM、「ストレージ」はNANDと読み替えられるようになれば、デバイス選びにも半導体ニュースの理解にも役立つはずです。用途に合った容量を選んで、快適なデジタル環境を整えてください。次にデバイスを買い替えるときは、ぜひメモリとストレージの両方のスペックに注目してみましょう。

