新しいMacを選ぶときや、自分のMacについて調べているときに、「Appleシリコン」と「Intel」という2つの言葉を目にして戸惑った経験はないでしょうか。どちらもMacの“頭脳”にあたるチップ(プロセッサ)の種類ですが、その中身や性能、できることには大きな違いがあります。
この記事では、AppleシリコンとIntelの違いを、チップの仕組みから性能・バッテリー・アプリの互換性まで、はじめての方にもわかりやすく整理します。さらに、自分のMacがどちらを搭載しているかの見分け方や、2026年のいま買い替えるならどちらを選ぶべきか、Intel Macを使い続ける際の注意点までまとめました。読み終えるころには、自分にとって最適なMac選びの判断材料がそろっているはずです。
Appleシリコンとは?Intelとの違いをまずざっくり整理
最初に、AppleシリコンとIntelがそれぞれ何を指すのかをおさえておきましょう。ここを理解しておくと、このあとの細かい違いがすっと頭に入ります。
Appleシリコンは「Apple自社製のチップ」
Appleシリコンとは、AppleがMacやiPadのために独自に開発したチップ(プロセッサ)の総称です。2020年11月に登場した「M1」を皮切りに、現在はM2、M3、M4、そして最新の「M5」へと世代を重ねています。
それまでのMacは、頭脳にあたるチップを他社から調達していました。それを「自分たちで設計したチップに置き換える」という大きな方針転換を行ったのが、このAppleシリコンへの移行です。
Intelチップは「2020年まで使われていたMacの頭脳」
一方のIntelは、世界的に有名な半導体メーカーであるインテル社が製造するチップです。Macでも長年このIntel製のチップ(Core i5やCore i9など)が使われてきました。
つまり、ざっくり言えば「2020年より前に発売されたMacはすべてIntel搭載」「2020年後半以降に登場した新しいMacの多くがAppleシリコン搭載」という関係になります。両者のいちばん大きな違いは、まず「どこが設計したチップか」という点にあるわけです。
移行はすでに完了。Macは“Appleシリコンの時代”へ
Appleは2020年に移行を始めてから、約3年かけてすべてのMacをAppleシリコンへと切り替えました。新品で販売されているMacは、現在すべてAppleシリコン搭載です。Intel搭載Macは、すでに「過去のMac」という位置づけになっています。
まずは、両者の違いを一覧で見てみましょう。
| 比較項目 | Appleシリコン | Intel |
|---|---|---|
| 設計のベース | ARM(省電力向き) | x86(汎用パソコン向き) |
| チップの構造 | SoC(部品を1つに統合) | 部品がそれぞれ分離 |
| メモリ | ユニファイドメモリ | 一般的なメモリ |
| 処理性能 | 高い | 世代により見劣り |
| バッテリー | 長い(最大20時間級) | 短め |
| 発熱・静音性 | 少なく静か | 多め |
| Windowsの起動 | Boot Camp非対応 | Boot Camp対応 |
| iPhone/iPadアプリ | 動かせる | 動かせない |
| 今後のサポート | 現行で安心 | 段階的に縮小 |
このあと、それぞれの違いをもう少しくわしく見ていきます。
AppleシリコンとIntelの違い①:チップの設計思想
AppleシリコンとIntelの最も本質的な違いは、チップの「設計思想」にあります。少し専門的な話になりますが、できるだけかみ砕いて説明します。
動作の土台が違う(ARM と x86)
Appleシリコンは「ARM(アーム)」という設計をベースにしています。これはもともと、スマートフォンなど省電力が求められる機器で広く使われてきた設計です。
対してIntelチップは「x86(エックスはちろく)」という設計を採用しています。長年パソコンの主流だった、汎用性の高い設計です。
この両者は“話す言語”が根本的に違うため、そのままでは互換性がありません。後ほど説明する「Rosetta 2」という仕組みは、この言語の壁を埋めるために用意されたものです。
CPU・GPU・メモリを1つにまとめた「SoC」構造
もう1つの大きな違いが、部品のまとめ方です。
従来のIntel搭載Macでは、計算を担うCPU、映像を担うGPU、データを一時的に置くメモリなどが、それぞれ別々の部品として基板の上に配置されていました。部品同士が離れていると、データの通り道が長くなり、そのぶん処理に時間がかかってしまいます。
一方、Appleシリコンはこれらをすべて1枚のチップに統合した「SoC(エスオーシー)」という構造をとっています。必要な部品が隣り合わせに並んでいるため、データのやり取りが速く、効率的になります。チップ全体がシンプルな作りになることで、故障のリスクが減るという見方もあります。
ユニファイドメモリでムダなくデータを共有
Appleシリコンが採用する「ユニファイドメモリ」も特徴的です。これは、CPUとGPUが同じメモリ領域を共有して使う仕組みのことを指します。
従来のように「CPU用のメモリ」「GPU用のメモリ」と分けて、その間でデータをコピーし合う必要がありません。そのためムダがなく、写真編集や動画の書き出しのような重い作業でもスムーズにこなせます。重いExcelデータを開いたときや、ブラウザのタブをたくさん開いたときの安定感にもつながっています。
AppleシリコンとIntelの違い②:性能・バッテリー・発熱
ここからは、多くの方がいちばん気になる「実際にどう違うのか」を、性能・バッテリー・発熱の3つの面から見ていきます。
処理性能とAI性能はAppleシリコンが優位
性能面では、Appleシリコンが大きく優位に立っています。世代を追うごとに性能は伸び続けており、2025年10月に登場した最新の「M5」では、グラフィック性能とAI処理の性能が特に強化されました。
M5は各GPUコアにAI処理用の仕組み(ニューラルアクセラレータ)を組み込み、メモリの帯域も前世代のM4から約30%向上したとされています。動画編集や画像生成といった負荷の高い作業ほど、その差を実感しやすくなっています。普段のメール・ネット・資料作成といった用途でも、軽快さの違いは十分に感じられるでしょう。
バッテリー駆動時間が圧倒的に長い
省電力設計のAppleシリコンは、バッテリーの持ちが大きく改善されています。
たとえばMacBook Airは最大18時間前後、MacBook Proでは最大20時間を超えるモデルもあり、外出先で1日中作業しても充電をあまり気にせず使えるレベルです。同じノートでも、Intel時代と比べてバッテリー駆動時間は1.5倍以上に伸びたといわれています。電源のないカフェや移動中での作業が多い方にとっては、特に大きなメリットです。
発熱が少なく、静かに使える
消費電力が少ないということは、発熱も少ないということです。
Appleシリコン搭載のMacBook Airには、そもそも冷却用のファンが搭載されていません。それでも普段使いでは熱に悩まされにくく、ファンの音もしないため、Web会議中や静かな図書館でも気兼ねなく使えます。発熱でパフォーマンスが落ちにくい点も、長時間の作業では心強いポイントです。Intel搭載のノートで、負荷をかけるとファンが勢いよく回り出した経験がある方なら、この静けさの違いはすぐにわかるはずです。
AppleシリコンとIntelの違い③:アプリの互換性とRosetta 2
買い替えで多くの人が不安に思うのが「今まで使っていたアプリは動くの?」という点です。ここはAppleシリコンとIntelの違いの中でも、特に実用面で重要なところです。
Rosetta 2がIntelアプリを“翻訳”してくれる
先ほど触れたとおり、AppleシリコンとIntelは動作の土台が違うため、本来Intel向けに作られたアプリはそのままでは動きません。
そこでAppleは「Rosetta 2(ロゼッタツー)」という仕組みを用意しました。これはIntel向けのアプリを、Appleシリコンでも動くように自動で“翻訳”してくれる機能です。おかげで、多くのアプリは移行後も問題なく使えてきました。現在、主要なアプリのほとんどは、すでにAppleシリコンに対応済みです。
Rosetta 2は段階的に終了へ。スケジュールに注意
ただし、このRosetta 2には“終わり”が近づいています。最新の状況を時系列で整理しておきましょう。
- macOS 26 Tahoe(2025年秋):Intel Macに対応する最後のmacOSとなりました
- macOS 27(2026年秋に登場予定):Apple Silicon専用となり、Intel Macでは動きません。Rosetta 2はこのバージョンまでは通常どおり使えるとされています
- macOS 28(2027年秋に登場見込み):Rosetta 2が大幅に縮小され、一部の古いゲームなどを除いて、一般的なIntel専用アプリは動かなくなる見込みです
つまり、いまの時点ではIntelアプリも普通に動いていますが、長く使いたいアプリは、早めにAppleシリコン対応版(ユニバーサル版)へ置き換えておくのが安心です。特に、音楽制作のプラグインや業務用の専門ソフトは更新が止まりがちなので、対応版があるか確認しておくとよいでしょう。なお、Intel Mac本体へのセキュリティ更新は、2029年ごろまで提供される見込みとされています。
iPhone・iPadアプリが動くのはAppleシリコンの強み
互換性の話には、プラスの側面もあります。AppleシリコンはiPhoneやiPadと同じARM設計のため、対応していればiPhone・iPad向けのアプリをMacでそのまま動かせます。これはIntel Macにはなかった、新しい時代ならではのメリットです。
一方で、Intel Macには「Boot Campを使ってWindowsをそのまま起動できる」「外付けGPU(eGPU)を増設できる」といった独自の強みもありました。Windowsの特定の業務ソフトをどうしても使う必要がある場合などは、この点が選択を左右することもあります。
自分のMacがAppleシリコンかIntelか見分ける方法
「そもそも自分のMacはどちらなんだろう?」という方のために、かんたんな見分け方を3つ紹介します。
①「このMacについて」で確認する(いちばん確実)
最も確実な方法です。画面左上のAppleメニュー(リンゴのマーク)から「このMacについて」を開いてください。
- **「チップ」**という項目に「Apple M1」「Apple M4」などと表示されていれば → Appleシリコン
- **「プロセッサ」**という項目に「Intel Core i5」などと表示されていれば → Intel
表示される項目名が「チップ」なのか「プロセッサ」なのか、ここがいちばんわかりやすい見分けポイントです。
② 購入した時期から判断する
おおよその目安として、購入時期からも推測できます。2020年11月より前に購入したMacであれば、ほぼ間違いなくIntel搭載です。
それ以降に購入した場合は、新品・中古・整備済製品などによって異なるため、①の方法で確認するのが確実です。
③ ターミナルのコマンドで確認する
少し操作に慣れている方なら、ターミナルを開いて uname -m と入力する方法もあります。
arm64と表示されれば → Appleシリコンx86_64と表示されれば → Intel
アプリをダウンロードするときに「どちら向けを選べばいいか」を確認したい場面でも役立つ方法です。
2026年、AppleシリコンとIntelどちらを選ぶべき?
最後に、いま選ぶならどうすればよいかを整理します。結論からいえば、これから買うなら基本的にはAppleシリコン一択です。
これから買うなら、迷わずAppleシリコン
新品のMacはすでにすべてAppleシリコンですし、性能・バッテリー・静音性のどれをとっても、Intel Macより大きく進化しています。
2026年6月時点での最新は「M5」世代です。標準のM5に加え、よりパワフルな「M5 Pro」「M5 Max」を搭載したMacBook Proや、M5搭載のMacBook Airがすでに登場しています。一般的な用途なら標準のM5でも十分快適で、動画編集や開発など重い作業をするならProやMaxを選ぶ、という考え方がわかりやすいでしょう。
なお、Mac StudioやMac miniなど一部のモデルは、まだ前の世代のチップが現行という状況もあり、最新世代への更新時期が注目されています。購入前には、各モデルの最新ラインナップを確認しておくと安心です。
メモリ容量は購入時にしっかり選ぶ
Appleシリコンの注意点として、購入後にメモリを増設できないことが挙げられます。ユニファイドメモリは本体に組み込まれているため、あとから足すことができません。
そのため、長く使うことを考えるなら、事務作業が中心でも16GB以上を選んでおくと安心です。動画編集をしたり、たくさんのアプリを同時に使ったりする方は、さらに余裕を持たせておくとよいでしょう。
Intel Macを使い続ける人・中古を買う人の注意点
すでにIntel Macをお持ちの方も、すぐに使えなくなるわけではありません。ただし前述のとおり、対応OSやアプリの面で“出口”が見えてきています。仕事で使う重要なアプリは、Appleシリコン対応版があるかどうかを、いまのうちに確認しておきましょう。
中古でMacを検討している場合は、価格の安さだけでなく「Appleシリコンかどうか」を必ずチェックしてください。今後どれくらい使えるかを考えると、多少高くてもAppleシリコン搭載モデルを選ぶほうが、結果的に長く快適に使えます。
まとめ:AppleシリコンとIntelの違いを押さえて賢く選ぼう
AppleシリコンとIntelの違いを、あらためて整理します。
Appleシリコンは、Appleが独自に開発したARMベースのチップで、CPU・GPU・メモリを1つにまとめたSoC構造とユニファイドメモリにより、高い性能・長いバッテリー・少ない発熱を実現しています。iPhone・iPadアプリが動かせるのも強みです。一方のIntelチップは2020年までのMacに使われてきたx86ベースのチップで、Windowsのネイティブ起動やeGPU増設といった独自の良さはあるものの、対応OSやRosetta 2の終了により、今後は使える範囲が段階的に狭まっていきます。
これからMacを買うなら、基本はAppleシリコン搭載モデルがおすすめです。まずは「このMacについて」で自分のMacがどちらかを確認し、用途に合ったチップとメモリ容量を選んでみてください。違いを正しく押さえておけば、後悔のないMac選びにきっと役立つはずです。
